木立のブックス近刊予告

音楽が本になるとき

聴くこと・読むこと・語らうこと

“音楽の本”を人文書の
ひとつのジャンルと位置づけた編集者と考える
「リベラルな共同体」のつくり方

音楽が本になるとき
木村 元 著
発行:木立の文庫

四六変型判上製
184ページ

2,200円+税
ISBN 978-4-909862-10-5

 

 

音楽が本になるとき 裏表紙


音楽と読書の“感動”の源泉はここにあった

……そのとき、わたしたちは語り合っている。その音楽を、その本をふたりの前に置いて、ことばではできない親密な語らいが始まる。……彼 /彼女は、もう会うことのできない過去の人かもしれない。あるいは、 これから生まれてくる子どもたちかもしれない。……創り手と受け手のちがいや、時代をともにしているか否かにかかわりなく、わたしたちの 前に置かれた音楽や本は、わたしたちのどんな属性をも取り去って、親密な語らいを始めさせてくれる。

孤独だけどひとりじゃない

♪音楽を聴いていて思わず泣きそうになると、「あの人だったらどう感じるだろうか?と思う。本を読んでいてむくむくと勇気がわいてきたとき、「あの人にも読んでもらえたら……」と希う。

♪わたしにとって、音楽を聴いたり本を読んだりすることは、心のなかの誰かとの対話にほかならない。――そんなふうにして、音楽と本は、具体的な個人とセットになって……

※こちらのメッセージでふれられています【トークイベントin Tokyo & Kyoto】は延期となりました。新しく日時が設定され次第、弊社サイトほかでご案内いたします。愉しみにしてくださっていた皆様にはまことに申し訳なく…お詫びいたします


編集部より

“音楽を聴くこと”と“本を読むこと”はともに、「創り手」と「味わい手」が時空を異にしながら時間を共にしあう体験といるでしょう。そこに「もうひとりの味わい手」が加わって「三角形」が浮かびあがるとき、あたらしい共同体が生まれると著者は語りかけます。

音楽書を中心に旺盛な出版活動を展開する小出版社、株式会社アルテスパブリッシング。その出版物は「音楽書と人文書を融合。独自ジャンル創出」(『新文化』2017年6月15日号)と評されました。

本書は、“音楽の本”を人文書のひとつのジャンルとして位置づけた編集者・出版人が綴るエッセイです。また本書では、書き手と読み手、読み手と読み手を繋げて共体験の「三角形」をつくるために各篇にBGMをつけました。BGMはQRコードを読み込むことでスマホなどで楽しんでいただけます。


〇詳しくは…
本の情報サイト:版元ドットコム(https://www.hanmoto.com/)にお立ち寄りください。
内容サンプルほかいろいろな情報がございます。

〇お求めは…
最寄りの書店やオンライン書店へご注文ください。

〇書店様へ…
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書評欄で紹介されました
『毎日新聞』2020年5月2日 ―― 評: 梅津時比古氏

……本書の著者は、日本の出版界で困難と言われていた音楽書を次々に成功させている。自身の初の著書は、その成功譚かと思いきや、これは詩と散文、哲学のあわいにある、極めて緻密な、内向の書である。
……いずれの章、どの一行にも、いわば著者の心の動き、世界に対する内面への探求が、自らの視点への過信を防ぎながらこまやかに、静かに語られる。そして、これが最も重要なことだが、音楽が好きで仕方がない、という思いが装丁を含めたすべてから伝わってくる。
手に取るとき、頁をめくるときに、大切に扱いたくなる。

熱い感想がつぎつぎ寄せられています!

桂川潤さん (装丁家)
 わたしにとっての全編の白眉は、「音楽と物語」と「書かれていないことを読む」でした。二つの文章の内容は対になっていて、「音楽をことばにする」ことの魅力と陥穽、そこで要求される芸術性のみならず倫理的ともいうべき「自制」と「批評性」を、音楽出版というご自身のスタンスを問いつつ、緊張感をもって記されているのが印象的でした。
「音楽」を「ことば」に置き換える際、そこに自制と批評性がなければ、「音楽」は俗臭にまみれた「物語」へと堕す。この「物語」を作り出していく出版メディアや放送メディアの動きを、これほど明確に告発した文章を、わたし自身ははじめて知りました。……

沼野雄司さん (音楽学者、音楽評論家、桐朋学園大学教授)
……確かにかつて学生時代には、こうした書籍があったような気がします。ゆるやかな音楽美学の本といいますか、ガチガチとした学術的な装いではないけど、キリッと思考の筋が通っている本。
後半にいけばいくほど、上質の学術エッセイというか、やはり「音楽美学」としかいいようのない深みが充満しており、特に後半の「音楽は三角形~」以降は、高度なアイディアを伴った内容が平易な文章で書かれていると思いました。造本がまた、ものすごく素敵。すみずみまでモノとして丁寧に作られていることがよく分かる。ともかく、なんともいえず滋味あふれる書籍です。

椎名亮輔さん (音楽学者、同志社女子大学教授)
「わたし」と「あなた」が同じ方向(作品)の方を向いている、という表現にとても頷かされました。本を書くというのも同じことで、著者である「わたし」と読者である「あなた」が同じ方向を向いている必要がある。
そんな本を書かなければならないと思います。ただそれは完全に「同じ」ではなくて、当たり前のことですが、多かれ少なかれいつもずれているし、それを考えに入れるべきでもある。
リュック・フェラーリにインタビューした時に彼が「私が作品を書くのは、世界にはこのような『見方』もあるのだ、ということを示したいからだ」と言っていたのも思い出します。

林田直樹さん (音楽評論家・ジャーナリスト)
いまほんとうに心がささくれだってしまう、不安と恐怖にとらわれてしまう、そんな世の中じゃないですか。いったい、いつ出口があるのかわからないというこの時代。そうしたなかで、この『音楽が本になるとき』という本は、すごく心を落ち着かせてくれる、ほんとうに美しい音楽のような本だなと思いました。
木村さんは編集者として、音楽に対して、本というものに対して、すごくロマンティックな思いを持っているんだなということを感じました。とても親密な、そして他者に対する思いが、この本にはこもっていると思います。 
――インターネットラジオ「OTTAVA Salone」: 2020年4月24日放送より